こんにちは。
東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院
歯科診療担当獣医師の森田です。
「口が痛いみたい」
「食べたいのに食べられない」
「よだれと口臭がひどい…」
こんな症状で来院される猫ちゃんの多くが、尾側口内炎(Feline Chronic Gingivostomatitis)と呼ばれる重度の炎症を抱えています。
今回は、全臼歯抜歯を行って半年で見違えるほど元気になった症例とともに、尾側口内炎の症状の特徴もわかりやすく解説します。
■ 尾側口内炎ってどんな病気?(症状を詳しく解説)

尾側口内炎は、主に 奥歯の周囲・口の奥(喉に近い部分)に激しい炎症が起きる病気 です。
口の痛みがとても強く、生活に大きな支障が出るのが特徴です。
▼ 具体的な症状(飼い主さんが気づきやすいもの)
① 食べたいのに食べられない(重要)
- カリカリを嫌がる
- 食べる途中でやめる
- 少し食べては離れる
- 頭を振る、口を掻く
猫は本来痛みを隠す動物ですが、隠しきれないような痛みのサインが出てしまう場合、強い痛みを疑います。
② よだれが増える・口臭が強い
- よだれがあごに垂れる
- フェルト状に毛が固まる
- 口臭が部屋に広がる
これらの症状は炎症による組織の破壊が原因です。
③ 口を触るのを強く嫌がる
- 触った瞬間に逃げる
- 顔を振ったり威嚇する
触られるだけで電気が走るような痛みがあると言われています。
④ 顔つきの変化
- 目を細める
- 食事中にうずくまる
- 耳が下がってイカ耳になる
- なんとなく元気がない
慢性的な痛みを抱える猫特有の表情です。
■ 術前:生活の質が大きく落ちていた

今回の猫ちゃんも、まさに上記の症状がそろっていました。
- 食欲低下
- 顔周りを触られるのを拒絶
- よだれ・口臭
- 口の奥の組織が赤く腫れて出血しやすい
毎日が痛みとの戦い。飼い主さまも「どうしてあげればいいのか…」と強い不安を感じていました。
抗生剤やステロイドの内科的治療も一時的に反応はするのですが、お薬が切れるとまた痛みが出始めるとのことです。
ここで重要なのは、内科的治療の期間が長いと抜歯後の症状改善までの治療奏功率が低くなってしまうというデータがあります。
現時点で口内炎の治療は抜歯しかありません。
飼い主様とよく相談した上で、今回は奥歯のみの抜歯である全臼歯抜歯という治療を選択しました。
■ 全臼歯抜歯後1ヶ月:痛みが大きく軽減

手術から1ヶ月後には、すでに明らかな変化が見られました。
- ✔ よだれ・口臭がほぼ消失
- ✔ 投薬なしでも食欲が安定
- ✔ 口を気にする仕草が激減
まだ完全な治癒ではありませんが、QOLが一段階上がったことがわかる経過でした。
■ 術後半年:驚くほどの回復。「別猫のように元気」
半年後に再診したところ、獣医師側から見ても驚くほどの改善が。
- ✔ 痛みゼロでごはんを完食
- ✔ 体重が健康的に増加
- ✔ 口腔内の炎症はほぼ消失
- ✔ 顔つきも明るく、遊びなどの活動量が増加
- ✔ 表情も若返ったみたいな飲料
尾側口内炎は難治性の病気ですが、適切なタイミングで抜歯を行うことで、ここまで改善する症例が確かに存在します。
■ “なぜ抜歯で良くなるの?”を簡単に説明すると
尾側口内炎では、歯の周りの組織が免疫反応で攻撃され続けるのが特徴です。
歯を支える歯根膜や歯根が存在する限り、炎症の「火種」が残り続けてしまいます。
全臼歯抜歯は以下の目的を持って行います。
● 痛みの原因(歯根・歯根膜)を根本から取り除く
● 免疫の“過剰反応”を止めて炎症を沈める
そのため、薬よりも圧倒的に効果が高いことがあります。
■ 当院では大学と共同研究を行っています
より確実な治療法を確立するために、当院では
- 口腔内微生物の変化
- 炎症性サイトカインの推移
- 抜歯時期と予後の関連性
- 長期的な経過データ
などを大学と共同で解析中です。
臨床と研究の両方から、「猫が痛みなく暮らせる未来」を作ることを目指しています。
■ まとめ
- 尾側口内炎は“強い痛み”が続く病気
- 投薬だけでは改善しないケースが多い
- 全臼歯抜歯は根本治療として非常に有効
- 手術後に“別猫のように元気になる”症例も多い
- 当院では研究を基に最適な治療プランを提案
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