「できれば歯を抜きたくないんです」
愛犬の歯を残したいという気持ちは、多くの飼い主さんが抱えている思いであり悩みだと日々の診療で感じます。
しかし実は、「無理に残すこと」が、かえって他の歯を失うきっかけになることもあります。
特にトイプードルやチワワなどの小型犬の前歯(切歯)は、歯周病が進行しやすく、見た目以上に根の周りの骨が溶けているケースが多いのです。
この記事では、「歯を抜かずに済ませたい」という飼い主様にこそ知ってほしい、歯周病の現状と、抜歯後に歯を“守る”再生治療についてお話しします。
なぜ小型犬は前歯の歯周病になりやすいのか?

小型犬は顎が小さいため、歯がきれいに並びきらず、重なって生える(叢生/そうせい)ことが多く見られます。
この歯の重なりがプラーク(歯垢)を溜め込み、ブラッシングの難しい前歯では、知らないうちに歯ぐきの奥まで炎症が進行してしまいます。
また、切歯は「噛み合わせのバランス」を保つ大切な歯。
1本でも失うと、咬み合わせのズレや他の歯への負担増にもつながります。
症例紹介|9歳トイプードル
「なるべく歯を残してあげたい」という気持ちから始まった診療
「歯石が気になる」とのことで来院された9歳のチワワです。
診察すると、前歯(切歯)と犬歯が密集(叢生)しており、間に厚い歯石の沈着が見られました。
また、指で押すと前歯はグラグラとグラグラと動揺していました。

デンタルレントゲンでは、右下顎第三切歯の周囲骨に**明らかな吸収(骨融解)**を確認しました。
小さな歯でも、支える骨の半分以上が失われていたのです。
治療内容
全身麻酔下でスケーリング(歯石除去)を行い、感染源となっていた右下顎第三切歯を抜歯しました。
抜歯後の空洞(抜歯窩)は骨の吸収が激しく、隣の犬歯に連続している状態です。
この空洞を埋めるように、PRF(自己血液由来の再生膜)と人工骨を用いて歯槽骨の再生をサポートしました。


「残すべき歯」と「抜くべき歯」の見極め
「できるだけ歯を残したい」
――その想いは尊重しつつも、歯科では「残せる歯」と「残すべきでない歯」を明確に見極める必要があります。
🔎抜歯を検討すべきサイン
以下のサインが抜歯の検討で重要です。
- 歯槽骨の吸収が著しい(レントゲンで骨が半分以下)
- 歯の動揺(グラつき)が強い
- 根尖膿瘍(歯の根に膿)や瘻孔(ろうこう)がある
- 隣の機能歯(犬歯や大臼歯)に炎症が波及している
- 痛みで食欲や生活の質が低下している
感染を抱えたまま歯を残すと、周囲の健康な歯まで巻き込むことがあります。
歯を「残す」ことと「守る」ことは、必ずしも同じではないのです。
🌱抜歯=終わりではない。再生療法という選択
「抜歯したら、もう終わり…」と感じる方も多いですが、実際には抜歯後こそ“守る治療”が始まると私たちは考えています。
当院では、抜歯部位にPRF(Platelet-Rich Fibrin)や人工骨を用いて、失われた骨や歯ぐきを再生させる再生療法を行っています。
💡PRFとは?
動物自身の血液から作られる“自然な再生膜”で、
- 感染リスクを抑え
- 炎症を早く沈め
- 骨や歯肉の再生を促す
といった効果があります。
「抜いた後のケア」を丁寧に行うことで、次の歯を守り、噛む力を保つことができるのです。
🩹無理に残さず、未来を守る選択を
歯を残すことは目的ではなく、「噛む・食べる・痛くない」生活を守るための手段です。
感染が強い歯を無理に残すよりも、適切に抜いて再生を促す方が、他の歯を長く健康に保てるケースが多くあります。
🐾まとめ|「抜きたくない」気持ちに寄り添いながら
- 小型犬の前歯は歯周病が進行しやすく、見た目以上に骨が失われていることがある
- 無理な保存は他の歯まで失うリスクに
- 抜歯+再生療法で、次の歯を守ることができる
「抜かずに治したい」という想いを尊重しつつ、
その子の“未来の歯”を守るための最善策を一緒に考えましょう。
🏥東京動物皮膚科センター/神宮前動物病院
当院では、歯をできるだけ残したい飼い主様の気持ちに寄り添いながら、
歯科用レントゲンでの正確な診断と、PRF・人工骨による再生療法を行っています。
📞ご予約・お問い合わせ:03-3403-8012(歯科担当:森田)
📍東京都渋谷区神宮前3-31-2-2F