「猫の犬歯が欠けてる…でも元気だし様子を見てもいいかな?」そんなご相談をよく受けます。
しかし、折れた歯の中では神経(歯髄)がむき出しになっていることもあり、痛みや感染を我慢しているケースが少なくありません。
猫は痛みを隠す動物。見た目が元気でも、折れた歯を放置すると歯髄壊死や膿瘍、鼻炎症状に進行することがあります。
今回は、猫の犬歯が折れたときに何が起こるのか、そしてどんな治療が必要なのかを解説します。
猫の犬歯破折とは?
猫の「犬歯」は、口の前方に突き出た長く鋭い歯で、食べ物を噛み切ったり、物を掴む役割を持っています。
この犬歯が転倒・落下・ケンカ・硬いおもちゃやドアなどで欠ける、または折れることを「破折(はせつ)」と呼びます。

主な原因
- 高いところからの落下
- ケージやキャリーを噛んで折る
- ケンカ中の外傷
- 硬いプラスチックやおもちゃをかじる
破折の中でも、神経まで達しているかどうかがとても重要です。
猫の犬歯は犬と比較し先端まで神経が通っているため、少し欠けた程度でも神経が露出(露髄)してしまうのです。
見た目以上に危険な「歯髄露出」
犬歯の内部には血管と神経(=歯髄)が通っています。
破折によってこの部分が露出すると、強い痛みや感染が生じ、最終的に歯根の先に膿が溜まります(根尖膿瘍)。

症状の例
- 片側だけでご飯を噛む
- よだれが増える
- 顔を触ると嫌がる
- 鼻水やくしゃみ(歯根が鼻腔に近いため)
猫はこれらのサインを隠すことが多く、「元気だから大丈夫」と思っているうちに慢性炎症や骨吸収が進行していることもあります。
破折歯の治療法
折れ方や猫の年齢によって治療方法は変わります。
動物病院ではまずデンタルレントゲン(歯科用X線)で歯根や神経の状態を確認します。
治療の選択肢
- 生活歯髄切断(Vital Pulp Therapy)
→ 折れてから数日以内の若い猫に行える治療。
神経を一部残して覆うことで歯を生かします。 - 抜髄根管治療(Root Canal Therapy)
→ 歯髄が壊死している場合、神経を取り除いて内部を消毒・封鎖します。人の歯医者さんと同じ「歯を残す」治療です。 - 抜歯(Extraction)
→ 重度感染・歯根破折・高齢猫では抜歯を選択することもあります。
いずれの方法も、適切な麻酔管理とX線確認が欠かせません。


放置するとどうなる?
折れた歯を放置すると、数週間〜数か月で以下のような問題が起こります。
- 歯髄壊死 → 根尖膿瘍(歯根の先に膿が溜まる)
- 鼻腔に炎症が波及 → 慢性鼻炎やくしゃみ
- 骨吸収 → 顎骨の変形
- 痛みの慢性化 → 食欲低下や性格変化
特に上顎犬歯は鼻腔に近いため、
折れた歯が原因で鼻水が止まらないというケースも珍しくありません。
再発予防と日常ケア
再発を防止するために、以下のことを意識していただくことが重要です。
- 硬すぎるおもちゃや角を噛ませない
- 多頭飼いではケンカ時の外傷に注意
- 定期的な口腔チェックで早期発見
- シニア猫では歯の脆弱化(吸収病巣)にも注意
特に「以前折れた歯がある猫」は、他の歯ももろくなっていることが多いため、動物病院での定期的な歯科X線検査が必要な場合もあります。
まとめ
- 猫の犬歯破折は見た目以上に深刻
- 放置すると歯髄炎や膿瘍、鼻炎の原因になる
- 抜髄や生活歯髄切断で歯を残せることもある
- 折れたらすぐに動物病院へ、レントゲンで確認を
猫は痛みを隠す名人。
「折れてるけど元気そう」は危険信号です。
早めの歯科検査で、見えない痛みを取り除いてあげましょう。